オーロラの歌
オーロラは目を細めて、続けて話す。
「あくまで、私の推測だけどね。それに、記憶は簡単には消せないの」
「神様でも?」
「ふふ、そうだね。神様でも難しいかも」
私の手を握っているオーロラの手に、力がこもる。
オーロラは私で、私はオーロラなのに、私とは違う温もりや匂いを感じる。
「記憶って、琉美が思っているよりもずっと深いところまで浸透していて、大切な瞬間ほど琉美の中に根付いてる」
記憶は、まるで海のようだ。
沈んでしまっても、必ずそこに在って。
すくい取ったところから、輪を広げて、波を立てて。
奥に行くにつれて、色が濃くなっていく。
「だから、大丈夫だよ」
「そっか……。皆は、私が生きていた日々を覚えていてくれるんだね」
「生きていた?どうして、過去形なの?」
されるとは思っていなかった質問に、動揺してしまう。
「だ、だって、ここ天国でしょ?」
私は能力で、寿命を使い果たしてしまった。
それで、今ここにいるんじゃないの?