オーロラの歌
そんな二人を見て、唯夏ちゃんがクスッと笑う。
この場に残っている四人は、気づいていた。
江藤先輩が、私と怜司くんのために、親切な嘘をついてくれたことに。
「あの、江藤先輩」
「ん?」
「……いいんですか?」
「何が?」
「琉美先輩と椎本先輩を、二人きりにさせてしまって」
利一くんは、江藤先輩の顔を覗き込みながら、質問を投げかけた。
瞼を伏せた江藤先輩は、校門を曲がろうとしていた私と怜司くんを眺めながら、口を開く。
「いいんだよ。好きな人が幸せになってくれたら、俺も幸せだから」
空に飾られた一番星が、江藤先輩を撫でるように、瞬いていた。
「お前って、意外にいい奴だったんだな」
「意外は余計だ」
四人がそんな会話をしていたことを、私と怜司くんは知る由もない。