オーロラの歌



静かな沈黙が流れた。


空を優雅に飛んでいた一羽の鳥が、湖に翼の先をちょん、と当てるとすぐに空高く上昇していった。


視界に映る湖は、中央から波紋を描く。



「では、僕はそろそろ行きますね」



湖の綺麗さに見とれていたら、突然ゼロさんがベンチから立ち上がった。


私に背を向けるゼロさん。



「あ、あの!」



私は、思わず呼び止めた。


ベンチから数歩離れたところで、ゼロさんは立ち止まった。


まだ、ゼロさんが答えてくれていない質問がある。


今度こそ、ちゃんと答えてください。



「どうして私を、ここに呼んだんですか?」



私もベンチから立ち上がり、ゼロさんの背中に質問をぶつける。



どうして、なんですか?


どうして、私を待っていたんですか?



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