オーロラの歌



ゼロさんは、ゆっくりと振り返り、私を捉える。




「オーロラさんに、会いたかったんです」




曖昧にもせず、ごまかすこともせず。


真剣な瞳で、泣いてしまいそうな表情で、淡くて低い声で。


想いを、答えを、言ってくれた。



「え……?」


「ずっと、ずっと、会いたかったんです」



どうして、とまた聞きたくなったけれど、言葉は声になってはくれなくて。


意外な答えに、時間が止まったと錯覚してしまうほど、固まってしまった。



「あなたに会えて、嬉しかったです」



私を殺すために会いたかった、という考えが頭を過ぎったのは一瞬だけ。


今のゼロさんの姿を見たら、それが理由じゃないことはすぐにわかった。


だって、今、ゼロさんから殺意や憎しみを感じないから。



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