オーロラの歌
俺はグリンの頬から手を放し、部屋の扉を開ける。
「……女王様」
グリンの表情は、緩むどころか、どんどん強ばっていることにも気づかずに。
グリンのもう一つの寝言を聞かずに。
部屋から出て行った俺は、バタン、と静かに扉を締めた。
リビングに移動して、リビングにあるソファに横になる。
電気の点いていない暗い部屋。
天井に、手をかざす。
この手で、俺は魔法を操ってきた。
光の、魔法を。
グッと手を握り締める。
爪痕が残るくらい、強く強く。
「くそ……っ」
街の皆の疑いを、早く消したい。
瞼が重くなってきて、俺は手を下ろした。
だんだんと遠ざかっていく意識の背後には、昔の記憶の残像が潜んでいた。