純愛☆カルテット
「あのさ、磯井さんこの後用事あったりする?」

「別にないよ。なんで?」

「途中まで一緒に帰ろ」

思いがけない提案に一瞬戸惑ったが、希和は了解した。

一緒に帰るのを躊躇するなんて小学生かよ。

あのころは男女二人で登下校するだけですぐに「ラブラブカップル」扱いされたもんだ。


棟を出て、すっかり暗くなったキャンパスを二人は並んで自転車をこいだ。

「磯井さんって実家生だっけ」

「そうだよ。浜安君は一人暮らしだっけ?」

「うん。」

他愛もない会話が続く。

希和が通う大学は広い敷地の中に学部ごとの棟が建っているため、移動
には自転車が便利なのだ。

いかにも大学といった感じの広いキャンパスにあこがれて受験したが、
3年目にもなるとこの広さが少し厄介に感じる。

積もった落ち葉の上を通るとガサリと乾いた音を立てた。
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