新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―
並んでベンチに腰掛けて、話の続きを聞いた。
「すみません、改めまして、赤ちゃんの成長に必要な栄養たっぷりのミルクさえ代謝できないということは、放っておいたら、その赤ちゃんは生きていられないということですよね?」
「そうですね。先天性代謝異常症の赤ちゃんに急激な症状が出て亡くなるケースがあるのは、生後5日から2週間くらいなんです。
それまでに、検査で陽性と診断された赤ちゃんの親御さんに連絡を取って、専門家のいる病院に連れてきてもらう必要があります」
「赤ちゃんが突然亡くなる……えっと、乳幼児突然死症候群でしたっけ?」
「ああ、それはちょっと違って、乳幼児突然死症候群は、眠っている間に突然、窒息して亡くなってしまうことです。
うつ伏せ寝が原因になるケースが多いらしくて、赤ちゃんは必ず仰向けで寝せましょうと呼び掛けたところ、亡くなる赤ちゃんがガクンと少なくなったんですよ」
「そんな簡単なことに気を付けるだけで救える命もあるんですね」
「ええ、とても簡単で些細なことで、たくさんの命が救えるんです。
しかしまあ、表に現れないだけで、昔は先天性代謝異常症も、乳幼児突然死症候群としてカウントされていたと思いますよ。
新生児マス・スクリーニングは、日本では歴史が浅いですから」