新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―
「想像してくださいよ。移民の町、ビジネスチャンスの町のニューヨークですよ。
住所をいつわる不法滞在者はいるわ、英語ができない人はいるわ、実家に帰ってるシングルマザーはいるわ、とにかくおかあさんがつかまらないんです。
ときどき警察に頼みますからね。『この病院の近辺にこういう母親がいるはずだから、見付け次第、病院に連行してくれ』と」
「ドラマチックですね」
とにかく、そうした苦労を経て、急を要する重症の代謝異常症を持つ赤ちゃんを、小石川先生たち専門医のもとへ連れてきてもらう。
この時点で、生後5日程度。
代謝異常症による急激な体調悪化が起こる時期には個人差があるけど、早ければ、すでに症状が出始めているころだという。
運び込まれた赤ちゃんが、小石川先生の目の前で、みるみるうちに状態が悪化して昏睡状態におちいったことがあるという。
1分1秒を争う事態の中で、小石川先生の的確な診断と治療によって、赤ちゃんは一命を取り止めた。
「それがね、土曜日の朝だったんです。休みの予定の土曜だったんですけど、スクリーニングの担当者から、ヤバい結果が出た赤ちゃんがいると連絡をもらってね。
日曜じゃなくてよかったですよ。日曜はスクリーニングもお休みですから、その赤ちゃんは亡くなってた可能性があります」
「そんなに急激な症状だったんですか?」