新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―
「高アンモニア血症って知ってます?」
「え? アンモニア?」
「高アンモニア血症は、血中のアンモニアの濃度が異常に高くなった状態のことなんですが、アンモニアは神経に悪さをする毒なんですよ。高アンモニア血症になると、嘔吐や意識障害が起こってきます」
「なるほど」
「通常、アンモニアは尿素回路という代謝のサイクルを経て、無害な尿素になって、おしっことして体の外に出されます。
ところが、土曜日の朝に運ばれてきた赤ちゃんは、尿素回路のサイクルに異常があった。血中のアンモニアの量が、通常の10倍ほどにまで跳ね上がっていました。危なかったですよ」
小石川先生が連絡した時点で、すでに嘔吐の症状が出ていた赤ちゃんは、ICUで体内のアンモニアを取り除く治療を受けた。
尿素回路のサイクルの異常な部分は、新生児マス・スクリーニングの結果からわかっていたから、素早い応急処置ができたという。
サイクルの異常な部分と一口に言っても何種類ものパターンがあって、おのおの違った治療法や薬が必要になる。
それについて、赤ちゃんの両親にアドバイスをしたり実際の治療を担当したりするのが、小石川先生たち拠点病院の専門医の役割だ。