新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―
「大学生の息子さん、ですか」
公介くんはサングラスを取って、ペコッと頭を下げた。
くっきりした二重まぶたの、甘くて端正な顔立ちは、確かに小石川先生によく似ている。
しかしねぇ、大学生?
小石川先生って見た目がほんとに若いし、しゃべり方も走るフォームも溌剌としてるから、息子さんがこんなに大きいって、すごく不思議な感じがする。
小石川先生と公介くんは、それぞれ別のコースをランニングしていたらしい。
時間を決めてホテルの前で落ち合うはずが、小石川先生がなかなか姿を現さないから、公介くんは探しに来たんだそうだ。
「部屋のカードキーは、とうさんが持ってるだろ。俺、腹が減ったのに、まさか道草してるとはね」
肩をすくめる公介くんを前に、私は小さくなった。
「すみません。私がいろいろ質問しまくっちゃって」
「あ、いいんですよ。父はしゃべるのが好きなんで。しかも、仕事の話、好きなんですよね。俺もさんざん聞かされてますよ。話し相手になってくださって、ありがとうございます」
じゃあそろそろ帰ろうかと、小石川先生は腰を上げた。
私も立ち上がる。
改めて小石川先生にお礼を言って、またご縁があれば会いましょうと言って別れた。
遠ざかっていく小石川親子の後ろ姿を眺めていたら、小石川先生のほうから公介くんにちょっかいを出して、やがて2人で笑い合いながら競走を始めた。
2人とも、かなり足が速かった。