新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―
息子が語る父の姿
「そんな年上なんですか!?」
昼過ぎ、買い物に出掛けた。
和柄のTシャツに七分丈のジーンズ、足下は下駄で、髪は襟足で一つ結び。
顔は、日焼け止めを兼ねた化粧下地を塗るだけだ。
あまりにもいい加減な格好だから、しょちゅう亜沙美に嘆かれる。
けど、いいじゃん、別に。
気取ってたって、息が続かないし。
野菜がそこそこきれいなスーパーで買い物をして、ついでにお米も買って、下駄をカラコロ鳴らしながら、家に向かって歩く。
このカラコロの音が好きで、学生時代から下駄は私の愛用品だ。
悲劇は突然、訪れた。
ブチッという音と衝撃を、つま先に感じた。
体重を支えるべき箇所がいきなり消滅して、私は前のめりに転んだ。
下駄の鼻緒が切れたらしい。
うぎゃあ、とか叫んだ気がする。
転びながら、両手に持ってたエコバッグを放り投げた。
下駄も両方、別々の場所に飛んでいった。
人通りも車通りも少ない昼下がり。
遠くにちらほら人がいるのは見えたけど、こういうのは普通、目撃してもスルーするでしょう。
どうぞ無視してくださいませ。
ああもう、めちゃくちゃ恥ずかしい……。
いじけながら体を起こして、膝立ちになって、とりあえずいちばん近くにあるエコバッグとその中身から拾い始める。
卵、買わなくてよかった。
でも、トマト悲惨。