新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―
何となく、趣味の話になった。
趣味というか、共通の話題であるランニングの話。
小石川先生が毎年マラソンを走っているというのは聞いていたけど、公介くんも一緒に走るらしい。
「42.195キロでしょう? どうやったら、そんな長距離を走り通せるんですか?」
「あれ、レースはされないんですか?」
「走ったことないですよ。散歩みたいな感覚で、そのへんをテクテク走ってる程度で」
「俺も前はそこまでモチベーションなかったんですけど、1回、父が勝手にエントリーして一緒に走ることになって、それで変わりましたね。父の患者さんたちが、でっかいポスター作って応援してくれるんですよ」
「患者さんたちって、子どもたち?」
「そうです。赤ちゃんのころから面倒見てる難病の子どもたちや、その家族。父の名前だけじゃなくて、俺の名前も覚えてて、沿道で呼んでくれるんですよね。
どんなにヘロヘロになってても、子どもたちに応援されたら、シャキッとするしかないでしょ。子どもたちからヒーロー扱いされるんですよ。それが嬉しくて」
だから公介くんも小石川先生と一緒にマラソンを走るんだ、と。
単純な人間でしょうと言って、照れくさそうに、公介くんは笑った。