新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―
先天性代謝異常症のサポート体制
「すっごく賢くなったような気がします」
軽快な足音が2人ぶん近付いてきたと思ったら、爽やかな挨拶が飛んできた。
「おはようございます!」
小石川先生と公介くんだ。
2人とも、私のちんたらペースに合わせて並走し始める。
何か申し訳ないんですけど。
「おはようございます。ペース、いいんですか?」
小石川先生は、いいんですよ、と笑った。
キラキラッと効果音の付きそうな爽やかスマイル。
若者でもなかなかできない芸当なのに、50代にしてやってのけるとは。
「今朝は話の続きをさせてもらおうと思って、用意してきたものがあるんですよ。とりあえず、昨日のベンチまで走りましょうか」
小石川先生が指差す公介くんの背中には、スポーティなデザインのリュックサックがある。
私は小石川先生の提案にうなずいて、ゴール地点であるベンチまで、可能な限り颯爽と走ってみせた。
所詮、引きこもり干物女の鈍足ですが。
ベンチに着いて、軽く水分補給をする。
公介くんのリュックサックから出てきたのは、新生児マス・スクリーニングに関する日本語の資料だった。
小石川先生は資料を私に渡してくれながら、はにかむようなえくぼを作った。
「講演会で配る簡単な案内と、もう少し専門的で詳しい資料です。案内のほうはプロに頼んできれいに作りました。こっちの資料は昨日、私が英語のものをざっと和訳しただけの急ごしらえなんですけどね」