新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―


「明日、僕は仕事がオフなので、奥さんと水入らずで観光に出掛ける予定なんです。その間、公介の面倒を見てもらえると助かると思いまして」



「ちょっと待って、とうさん、俺も一緒に行く予定じゃなかった!?」



「おまえは観光に興味がないと言ってただろう?」



「言ったけどっ」



でもデートって、とムニャムニャ文句をつぶやく公介くんがかわいい。


赤くなってるのをごまかすみたいに顔をしかめてるのもかわいい。



びっくりしたけど、公介くんには悪いんだけど、ときめかない。


どっちかっていうと、子守をおおせつかりました、みたいな。



「小石川先生、承知しました。明日、大学生の男の子が退屈しないような場所に、公介くんをお連れします」



「よろしくお願いします」



「とうさん!」



「公介くん、せっかくの日本滞在なのに、親戚のおばさんと出掛けるような感じになっちゃって申し訳ないけど、明日、よろしくです」



下駄でずっこけるとこ見られてるし、今さら、年上のきれいなおねえさんのふりなんかできない。


サバサバな感じで笑ってみせたら、公介くんはちょっと不満そうだった。



「父親公認という変な状況ですけど、デートはデートですから、親戚のおばさんはないんじゃないですか? 俺は小学生ですか、まったく」



そんないじけた顔してると、まさに小学生だよ。


しっかり者でまじめな大学生なのに。


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