新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―
小石川先生の出張は、学会と講演会で発表するためらしい。
後輩に当たる医師たちが接待や観光案内を申し出ていたらしいけど、全部断って、自分の時間を確保しているそうだ。
話しぶりから、もしかしてずいぶん偉い先生なんじゃないかという気がしてきた。
あなたは偉い人なんですかと訊くのもおかしな話なので、変化球を出してみた。
「どちらの病院にお勤めなんですか? 大学病院か何か、研究系でも実績のあるところですよね?」
私がわかるくらい有名なところだったら、間違いなく偉い先生だ。
という予測を超えて、変化球は見事に打ち返された。
「アメリカのニューヨークですよ」
「うわ、アメリカって、かなりの医療先進国ですよね?」
「そうですね。アメリカでは、オバマ大統領の医療に手厚い政策の効果もあって、社会制度としての医療は日本よりも発展していると言えるでしょうね。
それについて学会や講演会で話すのが、今回の僕の仕事でね」
聞けば、小石川先生は日本で5年ほど医師としての修行を積んだ後、20年近くに渡ってアメリカの病院で働いているらしい。
ん? ちょっと待って。
ということは、ざっと足し算すると、小石川先生って50代前半?
信じられない。
この人、余裕で10歳くらいサバが読める。