新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―
新生児マス・スクリーニング基礎論
「ネタにさせていただきます!」
「赤ちゃんの足の裏の傷から、どんなことがわかるんですか?」
朝の挨拶の次に出た言葉がそれだった。
爽やかに挨拶して軽快に私を追い抜いていった小石川先生が、数歩先で足を止めて振り向いた。
「それ、まさに僕の専門分野ですよ。新生児マス・スクリーニングというんです。唐突に、どうされました?」
「昨日、最近出産した友達のところに、遊びに行ったら、あったんです。赤ちゃんの足の裏の傷。で、気になって訊いてみたら、検査用の採血の痕って言われて」
私はちょっと息切れしながら、軽く事情を説明する。
私に並走し始めた小石川先生は、今までけっこうなペースだったはずなのに、まったく平気そうな口調だ。
「日本では、生まれて5日程度の赤ちゃん全員に、その採血の検査をするんですよ。
なぜ生まれてから数日置くかといえば、赤ちゃんがおかあさんの胎盤に頼らず、自力で代謝を始めるのが2日目くらいだからです。
おなかの中や出産直後じゃダメなんです」