初恋に息を吹きこんで、
初恋に息を吹きこんで、
週のはじめの1限目。
少し肌寒くなってきた教室で、背筋をぴんと伸ばす。
その姿勢のまま、配布されていた合唱用の楽譜を机の中に仕舞いこんだ。
そして代わりに取り出したのは、教科書と中学生になってから使うようになったアルトリコーダー。
もう1年半もの付き合いになるそれを手に取る。
目の前にいる先生の指示どおりに手早くリコーダーを組み立てた。
周りからリコーダーを吹く音が聞こえるけど、しっかり防音効果の施されたここは、音楽室なんだ。
私の学校は毎週月曜日と第3金曜日が音楽の授業になっている。
週によって授業が多少変化する、面倒な時間割編成だ。
そして今も音楽の最中で、私もしっかり練習しなきゃ、と思った瞬間。
「なぁなぁ」
隣に座る男子……田村健太(たむら けんた)が私にこそこそと声をかけた。
田村の顔を見て、反射のように顔をぎゅっとしかめる。
今はリコーダーの練習時間だっていうのに、毎回毎回こいつはなんなんだ!
私に恨みでもあるのか!
……うそ。
本当は理由なんてよく知っている。
「戸部さぁ、新庄さんにはちゃんと伝えてくれた?」
< 1 / 24 >