初恋に息を吹きこんで、
初恋に息を吹きこんで、




週のはじめの1限目。

少し肌寒くなってきた教室で、背筋をぴんと伸ばす。

その姿勢のまま、配布されていた合唱用の楽譜を机の中に仕舞いこんだ。



そして代わりに取り出したのは、教科書と中学生になってから使うようになったアルトリコーダー。

もう1年半もの付き合いになるそれを手に取る。

目の前にいる先生の指示どおりに手早くリコーダーを組み立てた。



周りからリコーダーを吹く音が聞こえるけど、しっかり防音効果の施されたここは、音楽室なんだ。



私の学校は毎週月曜日と第3金曜日が音楽の授業になっている。

週によって授業が多少変化する、面倒な時間割編成だ。

そして今も音楽の最中で、私もしっかり練習しなきゃ、と思った瞬間。



「なぁなぁ」



隣に座る男子……田村健太(たむら けんた)が私にこそこそと声をかけた。



田村の顔を見て、反射のように顔をぎゅっとしかめる。



今はリコーダーの練習時間だっていうのに、毎回毎回こいつはなんなんだ!

私に恨みでもあるのか!



……うそ。

本当は理由なんてよく知っている。



「戸部さぁ、新庄さんにはちゃんと伝えてくれた?」






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