初恋に息を吹きこんで、




小毬にもう1度謝ってからおとなしく席に腰をおろせば、心待ちにしていたかのように田村は私に体を向ける。

目をきらきらと輝かせていて、眩しい。

身を乗り出すせいで距離が近い。



「新庄さんと話してたけど、ちゃんと一緒にいる俺のアピールしてくれた?」

「するわけないから」



なに、さも当然かのように言ってるの、こいつ。

小毬とのことは断り続けていて、1度だって悩むことさえなかったのに。

協力してもらえると思っていることが、理解できない。



はやくに席に着いていながらリコーダーの練習もしてないし、いつも授業の時には間違えてばかりだし。

なにを考えて生きているのかな。



冷ややかな視線を向けてもこたえないどころか、不満げな顔をしている。



「俺のこのあふれる想い、伝えてくれないとかどういうこと! 意味わかんねぇ!」

「意味わからないのはこっちだよ、ばか」



なにも告げてないくせに、なにがあふれる想いだ。

伝えるのは自分のすることだって言いたい。

言ってやりたい。



でも、あまりにも田村が勢いで生きているばかで。

本当にばかすぎて。

なんだか力が抜けてしまった。







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