初恋に息を吹きこんで、




「うざいはだめだよな。
掃除してないのは確かなんだから」

「お前もいなかったくせになに言ってんだよ」

「これでも俺はちりとり取りに行ってたんだよ。
なんか他クラスが借りたまま返し忘れてたらしいぞー」



なんだ。

田村はさぼってたわけじゃなかったんだ。

ばかだし、人の話聞かないし、てっきりどこかで遊んでいるんだと思ってたのに。



「俺がいなかったのは本当だし、戸部にはなんも言えないけど!」



そう言った彼は、そのうえでからっと笑ってみせる。



「でもまぁ確かに、戸部の言い方も悪い。
どっちも気をつけた方がいいよな」



あまりにも明るく言われてしまい、反発心も芽生えない。

無意識に入っていた、肩の力が抜けて指先が震えた。



「……うん」

こっくりと頷いた私にうんうん、と田村は頷く。

そんな田村の手からちりとりを黙って受け取り、ごみを捨てた男子たちはそっと音楽室から出て行った。






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