初恋に息を吹きこんで、








席を立ち、まっすぐに小毬の方へ向かう。



今日は第3金曜日。

月に1回だけある、金曜日の音楽の授業が終わった。

このまま昼食の時間になるから、今日は準備の担当である小毬のためにはやく教室に戻らないといけないというのも、私が急いでいる理由のひとつだ。



「小毬、教室戻ろう」

「うん」



ふわふわの髪を揺らして頷く彼女は、今日もやっぱり可愛い。

こっそりひとりで癒されていると、背中から田村に自分の名前を呼ばれた。



ああ……と唇に歯を立てる。



授業中も、ずっと、私は彼と話をしないで避けていた。

一昨日の掃除のあとからなんだか気まずくて、なにを話せば、どんなふうに話せばいいのかわからなくて。

だからはやく教室に戻ってしまいたかったのに。



田村の声は高くもなく低くもない、聞き取りやすい声だ。

耳にすっと入ってくる。



だけど小毬の目の前で、普段はそこまで話さない私にわざわざ田村が声をかけた。

これはどうして?






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