初恋に息を吹きこんで、
「ちょっといい?」
突然、わざわざ授業終わり。
そんなタイミングで呼び出せば、小毬になんて言われることか。思われてしまうか。
もしかして……なんて思われたら、目も当てられないのに。
そうは思うのに、小毬が先に戻ってるねと変に気を利かせてしまい、スキップするように音楽室から出て行ってしまう。
他のクラスメートたちも、私たちの会話を聞いていなかったらしく邪魔することもない。
かんたんにふたりきりになり、戸惑ってしまう。
だけど田村があまりにも必死に言葉を探して、切なそうに瞳を細めていたものだから私は納得してしまった。
田村が私に話すことなんて、小毬のことしかない。
今まで散々聞いてきた、小毬への好意を示す言葉が頭をよぎる。
『この俺のあふれる想い、伝えてくれないとかどういうこと!』
『俺の想いは、甘いよ』
そして、なぜか同時に一昨日の田村の姿を思い出した。
男子にはっきりと注意して、私のだめなところも言って。
それでいて私とは違い、きつくないもの言いだった。
いつもと同じ田村が、いつもと違うように見えた。
その名残に引っ張られているのか、動揺を隠せない。
自分の感情に戸惑って、なんだかふわふわと揺らいでいる。