初恋に息を吹きこんで、
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「転校……」
意味を受け入れられないまま、ぽつりと先生の言葉を繰り返す。
呆然としたまま、それでも耳につく周りの声。
みんなざわざわと騒いでいて、誰もそのことを聞かされていなかったことを知った。
金曜日で最後だったんだと、誰にも言わないでくれと言っていたと伝えられて。
そして、それを聞いた誰かが、小さく呟いた。
「本当にあいつ、誰にも言おうとしなかったのかな」
どくん、と心臓が跳ねる。
呼吸が浅くなる。
『あのさ、俺、戸部には言っておきたいことが、』
────ああ、どうして。
私はあの時彼の話を遮ってしまったんだろう。
ちゃんと聞いておけばよかった。
聞かなければ、いけなかった。
おそらく田村は私に転校することについて、話そうとしてくれていた。
なぜ私なのか、どこまで話すつもりだったのか、今となってはわからないけど、でもきっとそう。
それなのに……。