初恋に息を吹きこんで、




先生の話は耳をすり抜けていく。

ぼんやりとした頭でホームルームが終わり、小毬に促されるままに音楽室へ向かった。



月曜日の1限目、音楽の授業のために席に着いて。

心が凍りついてしまったまま、ただ指示されたことだけを無意識にこなしていた。



その時、



「次はリコーダーね。
えっと、田村くんはいないし、戸部さんは……」



困ったように首を傾げた先生の言葉に、私は息をつまらせた。

隣に目をやる。



笑って、私の方を向いて、話しかけてきていた田村。

小毬のことが好きで、こそこそと関係を近づけようとしていた田村。

どこか他の男子とは違う、優しく芯のあった田村。



もう、いない。



ぽたり、と涙が頬をすべり落ちた。

リコーダーが私の涙で濡れていく。



声もなく、泣いている私を見て、クラスのみんなが驚く。

リコーダーのペアの話で注目されていたこともあって、今すべての瞳が私に向けられていた。



慌てた先生が保健室に行くかと気づかってくれるも首を横に振る。

今日はペアはなしでいいと押し切り、無理やりそのまま授業を再開してもらう。

涙をぬぐって、周りのリコーダーの音色を聴きながらリコーダーを構えた。






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