初恋に息を吹きこんで、




心臓が痛い。

ぎゅうぎゅうと締めつけられて、どうしようもなくて、苦しい。



無駄にうるさいし、子どもっぽいし、何度も腹が立った。

でも、田村はばかだけど、ばかじゃなかった。



本当にばかだったのは、私だ。



リコーダーの穴をあとが残るほど強く塞いだ。



悔しい、苦しい、悲しい。

会いたい。



「……田村のうそつき」



恋は甘いなんて言ってたくせに、そんなことないじゃない。

どちらかといえば、苦くて、酸っぱくて、知らない方がよかった。



そんなふうだったけど、田村が言っていたのとは違うけど、だけどこれは、────恋だ。

どうしようもない、初恋だった。



忍ぶように彼への想いを唇から吐息とともにもらす。



ばか正直で、いいやつだった田村に、いつかまた会えるかな。

言えるかな。

この酸っぱい、酸っぱい、想いを。



たくさんの奇跡をかき集めて、私は言いたいよ。

田村のことが、好きだって。



リコーダーに唇を当てる。

そっと、息を吹きこんで。

周りの音に紛れてしまうような、なんとも弱々しい音に、私はぐしゃりと顔を歪めて笑った。



応えるように、田村のリコーダーの音色が聞こえた気がした。



               fin.





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