初恋に息を吹きこんで、








教科書とノート、筆記具をふたり分。

それらを抱えた私はお手洗いの前でぼんやりと待っている。



今は休み時間。

教室移動中なんだけど、途中で寄っていい?と言う小毬にもちろんと頷いたから、ここでひとり待っている。



休み時間が終わるまで、あと5分。

意味もなく走り回っている男子が目の前を通って行き、顔をしかめた。



「あれ、戸部だ」



ふいに名前を呼ばれ、声の方に視線をやる。

そこにはひとりで歩いている田村の姿。



いやそうな表情になった自覚があるくらいなのに、田村は鈍感なのか気にとめていないのか、わざわざ目の前で足をとめた。



「教室移動せずになにしてんの?」

「待ってる」



そう言うと、お手洗いの前で私が待つ存在に気がついたのか、そわそわと落ち着きのない態度になる。

顔が見たい、声が聞きたい、できれば自分に向けられたい、といったそんな欲望がだだもれだ。



「田村、空気読んで」

「え」

「女子トイレ前に立つ男子とかありえない」

「えー……」






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