初恋に息を吹きこんで、
ショックを受けた顔をしているけど、そんなこと知らない。
これだから頭の回らない男子は!
いいよ、小毬が出てくる前にはっきりきっぱり言ってあげよう。
「デリカシーない男は嫌われるよ」
撃沈。
肩を落とした田村の前で大きくため息を吐き出した。
小毬を可愛いと思うのも、好きなのも、よくわかる。
でもこんなんじゃだめ。
気が回らないようなやつは小毬には似合わない。
好きだなんて私にはわからない感情を口にするくせに、行動はそれに釣り合ってないように思う。
「ほら、わかったらさっさと移動する。
遅刻したら許さないから」
にらみを効かせれば、もうやりとりは終わり。
私から田村に言うようなことなんてひとつもない。
「わかってるっつーの!」
どうしようもない感情をぶつけるように、私に向かって手が伸ばされた。
さして変わらない大きさのそれは、すっかり忘れていた夏の名残を感じさせる色に染まっている。
ぐしゃぐしゃとかき混ぜられる私の前髪。
束ねた髪に指先が引っかかって、ひどい有様だった。