初恋に息を吹きこんで、
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「それでね、その時にお母さんが……」
ひょこひょこと跳ねるように体を揺らし、小毬は弾んだ声で話をする。
振動で髪はふんわりと踊っている。
無邪気にはしゃぐ彼女は可愛くて、また何人かの男子が射止められたとかんたんにわかった。
陽が射すようで、小毬の笑顔は眩しい。
うんうん、と頷いて、彼女との癒しの時間。
1限目の音楽がはじまるまでのほんの少ししかない貴重な時間だというのに、私たちの邪魔をする存在がある。
それは直接ではなく、間接的に。
だけど確実にちくちくと視線が私に突き刺さっていく。
はじめは放っておけばいいかと思っていた私だけど、次第にどうしようもなく気になって、無視できなくなる。
小毬の座席の近くでふるふると震え、風は私の肌を撫でた。
田村のばか、こっち見すぎだよ……!
小毬のことが気になるのはよくわかったから、もういい加減にして。
そんなに見られていたら小毬の話に集中できない。
こんなにも視線も顔もうるさいのに、小毬自身が田村の気持ちに気づいていないのは奇跡だ。