闇に咲く華
できれば一緒に登校するのは避けたいから、靴を気にしたり、忘れ物がないかカバンの中を見てみたりして、時間を稼いでみてもたいした効果はなく。
私が後から行くと、エレベーターはちょうど6階に着いたところだった。
「おはよう」
今さらだけど、面と向かって会っているのに無視も出来ず挨拶をすると、チラッとこちらを見た白玖が一歩横に移動した。
「どうぞ」
開いたエレベーターのボタンを押しながら、そう言って私を先に乗せる。
そして一階へ着くと、今度も同じように〝開〟のボタンを押して待つので、私に先に降りろという意味だと気付いた。
「ありがとう」
「いつだ?」
いつって?
聞かれた意味がわからず、マンションロビーからエントランスへと向かいながら、なんのことかと考えていると、白玖が隣に並んだ。
「いつ、越して来た?」
「あぁ……2週間、くらい前かな」
私がそう返事をすると、エントランスの扉を押して開けた白玖が、ここでも私を先に行かせてくれた。
「ふーん」
聞いてきたわりに、たいして興味がないのか、軽い声が返って来る。