闇に咲く華


マンションを出ると、舗装された道に眩しい朝日が降り注いでいた。


同じ道のりで、同じ方向へ行く相手と、別々に行くというのは難しい。


かといって、待ち合わせたわけでも、仲の良い相手でもない。


「お母さんが再婚して……で、ここに」


無視しておけば……とは思っても、それはそれで変に気まずく、仕方なくなにか話した方がいいのかと思い、私なりに気を使って口にした言葉だった。


それなのに、返事がない。


少し離れて歩く白玖を見ると、返事をしないわりに私を見ているから、もしかして、話題が悪かったのかと思う。


「あ、再婚って言っても、別にそんなんじゃないし」


「そんなんじゃねえって?」


「えっと、付き合ってるのは前から知ってたし。松井さん……あ、新しくお父さんになった人ね。その人もいい人だし、別に暗い話しじゃないっていうか……」


「ふーん」


「で、松井さん……じゃなくて、お父さん……が、結婚して私たちと一緒に住むために、あのマンション買ってくれて。それで、引っ越してきたの」


私にとってこのタイミングでの母親の再婚は、とてもありがたかった。


名前も変わることが出来たし、なにより引っ越しも出来て学校も変われたから。

< 30 / 67 >

この作品をシェア

pagetop