闇に咲く華
「んで、転校って流れか」
「うん。でも、それもよかったと思ってる。前の学校で、ちょっといろいろあって……」
別に言わなくてもいいことだけど、間を持たせるためには会話を続けることも必要だと思ったから。
なにより、白玖の出す空気が、思いがけず話しやすかったってのもある。
どこまでも緩い空気をまとっていて、それが穏やかに感じるからかもしれない。
「色々?」
「うん、色々」
「色々ってなんだ?」
「それは言いたくない。だけど、再婚はしてくれてよかったって思ってて……」
「そのわりに、松井さんって呼んでんだな」
それもそうだけど……。
「だけど、急にお父さんとか呼べないし」
「そうか?」
「そうだよ。御影君なら呼べる?」
「呼べない、かもな」
「でしょ?」
やっぱそうじゃんと思ったとき、前から歩いて来た人が私とぶつかりそうになった。
ぶつからなくて済んだのは、ふいに腕が掴まれ、白玖の方へと引っ張られたから。
「だな」
軽く頷いた白玖が、そのまま自分の反対側へと私を引き寄せる。