闇に咲く華
なぜそうするのかは聞かなくてもわかった。
道の端にいた方が、人に邪魔されることなく歩きやすいから。
昨日も思ったんだけど、白玖って予想外に紳士的なのかもしれない。
大牙の慣れ慣れしい腕を、何度も放してくれたのは白玖だったし。
「あのさ、満島君に言ってくれない?」
「大牙でいいんじゃね。あいつもそう言ってっし」
呼び方など、この際どうでもいい。
「じゃあ、大牙……に言っておいて。私をからかうのやめてって」
今後もあのテンションでからかわれ続けるのかと思うと、それはそれで迷惑だから。
「本気じゃないのもわかってるけど、正直、面白くもないし、相手する気分じゃないの。髪形を褒められても、別に私自身気に入ってるわけでもなんでもないし、嬉しくもなんとも……」
「自分で言えよ」
アッサリと言われた言葉に、思わず隣を歩く背の高い白玖を見上げる。
「お前が思ってることを、なんで俺が言うんだよ」
いや、まあそうだけど。
確かに、自分で言えばいい話なんだけど。