闇に咲く華
「うちは、3年間クラス替えがないのよね」
職員室を出て、教室までの廊下を今日から担任になるらしい女の先生と歩く。
朝の穏やかな日差しが、掃除の行き届いた廊下へと降り注ぐ。
廊下の窓から見える校庭には、新緑の若葉が揺れていた。
「でも、マジメな子が多いクラスだから、心配ないわ。近くには評判の悪い学校もあるけど、ここはそうじゃないから。それに、2年に進級するタイミングでの転校でよかったじゃない。1年の終わりは、ほとんど学校行ってなかったって聞いたけど……」
新しい学校。
新しい制服。
新しい担任。
私を知らない生徒。
彼のいない世界。
「まあ、なにかあればいつでも相談して。友達が出来ると、学校も楽しくなるわよ」
担任がそう言って、笑顔を見せる。
友達なんて本気でいらないし、学校に楽しさなんて求めていない。
期待して、裏切られて、誰もいなくなるくらいなら最初からいないほうがマシ。
私を知らない人達の中で、ただ静かに過ごせればそれでいいのだから。
担任がガラガラと音を立てて、教室のドアを開ける。
「はい、座って。今日は転校生を紹介します」
そう言った担任が、私に入るよう促した。