空の下の笑顔の樹
「ねえ、お母さん。駄菓子屋さんて、こんな感じ?」
スケッチブックに描いた駄菓子屋さんの絵を、さっそくお母さんに見せてみた。
「んんー。ぜんぜん違うんだけど、よく描けてるわね。すごく美味しそうなお家よ。美咲は相変わらず絵が上手ね」
今日もお母さんに絵を褒められた。あたしは勉強が苦手だけど、絵を描くことは得意で大好きだ。お母さんの話によると、あたしは二歳の頃から絵を描き始めたらしい。コンビニに行ったまま、なかなか帰ってこない真奈美は、週に一度、スイミングスクールに通っているけど、あたしは塾にも通っていないし、習い事もしていないし、学校のクラブにも入っていないので、いつも部屋で絵を描いて過ごしている。そんなあたしの得意な絵は、似顔絵と風景画。
「お母さん、ただいま」
「おかえり。ずいぶん遅かったわね。何かあったのかと思って、心配したわよ」
「遅くなって、ごめんなさい。どのお菓子にしようか迷っちゃったんだ」
ようやくコンビニから帰ってきた真奈美は、リビングのソファーに座って、コンビニで買ってきたお菓子と自分のおやつを食べながら、テレビを観始めた。真奈美は時代劇が大好きで、テレビを点ける度に時代劇ばかり観ている。
「あ、いつの間にか、もうこんな時間ね。そろそろ晩ご飯の支度を始めなくちゃ。美咲も真奈美も手伝ってね」
「はーい!」
友達の似顔絵を描いていたあたしも時代劇を観ていた真奈美も大きな声で返事をして、キッチンに行って晩ご飯の支度を手伝い始めた。
「二人でそのじゃがいもの皮を剥いてね」
「うん。わかった」
あたしと真奈美にじゃがいもの皮向きを頼んでくれたお母さんは、料理が上手で、毎日いろんな料理を作ってくれる。今夜の青山家の晩ご飯は、じゃがいもたっぷりのカレーライスと肉じゃがとポテトサラダとお味噌汁。
「ただいま。ふう。やっと我が家に着いた」
お母さんとあたしと真奈美との三人で料理を作っているうちに、お父さんが家に帰ってきた。
「お帰りなさい。今日も一日お疲れ様」
「お、今夜はカレーだな。すごく良い香りがするぞ」
「もうすぐ出来るから、もうちょっと待っててね」
「うん。今夜もビールを飲むとするか」
お母さんに出迎えられたお父さんは、いつものように寝室に入って服を着替えて、リビングの椅子に座った。おしどり夫婦とまではいかないかもしれないけど、お父さんとお母さんは仲の良い夫婦だと思う。
「お父さん、お疲れ様。はい、缶ビールだよ」
家族を養うために頑張って働いているお父さんに缶ビールを渡すのは、あたしの大切な役目の一つ。
「ありがとう」
あたしから缶ビールを受け取ったお父さんは、「ぷはあ。今夜のビールも、すごく美味しいなあ」と言って、ごくごくと音を立てながら飲み始めた。そんなお父さんの大好物は、カレーライスとラーメンとチャーハンと餃子とビールと柿ピー。
「カレーが出来たわよ。お皿に盛り付けるから、美咲と真奈美で運んでね」
「はーい」
お父さんが晩酌を楽しんでいる間に、あたしと真奈美とで、出来上がった料理をテーブルに並べて、みんなで椅子に座った。
「さあ、温かいうちに食べましょう。それではいただきます」
「いただきます!」
今夜も家族四人揃って晩ご飯を食べる。青山家の日常は、いつもだいたいこんな感じ。
「ねえ、あなた。今日は嬉しい知らせがあるのよ」
スプーンをお皿の上に置いて、椅子から立ち上がったお母さんは、とっても嬉しそうにしながら、駄菓子屋さんのチラシをお父さんに手渡した。
「この時代に、駄菓子屋がオープンするなんて、すごく珍しいな」
駄菓子屋さんのチラシを見たお父さんは、ちょっと驚いたような顔をしていた。
「うちにも見せて!」
お父さんから駄菓子屋さんのチラシを奪った真奈美は、スプーンを口にくわえたまま、
駄菓子屋さんのチラシをじっと見つめている。
「お父さんも、駄菓子屋さんに行ったことがあるの?」
早く駄菓子屋さんに行ってみたいという、あたしの好奇心は抑えられない。
「数え切れないほどあるぞ。今は見かけなくなってしまったんだが、お父さんとお母さんが子供の頃には、近所の周りにいろんな駄菓子屋があってな。ほとんど毎日のように駄菓子屋に行って、いろんな駄菓子を買って食べてたんだぞ」
「そうそう。私もよく駄菓子屋さんに通ってたっけな」
お父さんとお母さんは、昔を懐かしむような感じで、駄菓子屋さんに通っていた頃のエピソードを話してくれた。
「駄菓子屋さんて、昔はいっぱいあったんだね」
お父さんとお母さんの思い出話を聞いて、駄菓子屋さんというお店がどんな感じのお店なのか、だんだんわかってきたけど、自分の目で確かめてみないことには、今ひとつイメージが湧いてこない。今日は水曜日だから、あと十回寝れば、駄菓子屋さんに会える。
スケッチブックに描いた駄菓子屋さんの絵を、さっそくお母さんに見せてみた。
「んんー。ぜんぜん違うんだけど、よく描けてるわね。すごく美味しそうなお家よ。美咲は相変わらず絵が上手ね」
今日もお母さんに絵を褒められた。あたしは勉強が苦手だけど、絵を描くことは得意で大好きだ。お母さんの話によると、あたしは二歳の頃から絵を描き始めたらしい。コンビニに行ったまま、なかなか帰ってこない真奈美は、週に一度、スイミングスクールに通っているけど、あたしは塾にも通っていないし、習い事もしていないし、学校のクラブにも入っていないので、いつも部屋で絵を描いて過ごしている。そんなあたしの得意な絵は、似顔絵と風景画。
「お母さん、ただいま」
「おかえり。ずいぶん遅かったわね。何かあったのかと思って、心配したわよ」
「遅くなって、ごめんなさい。どのお菓子にしようか迷っちゃったんだ」
ようやくコンビニから帰ってきた真奈美は、リビングのソファーに座って、コンビニで買ってきたお菓子と自分のおやつを食べながら、テレビを観始めた。真奈美は時代劇が大好きで、テレビを点ける度に時代劇ばかり観ている。
「あ、いつの間にか、もうこんな時間ね。そろそろ晩ご飯の支度を始めなくちゃ。美咲も真奈美も手伝ってね」
「はーい!」
友達の似顔絵を描いていたあたしも時代劇を観ていた真奈美も大きな声で返事をして、キッチンに行って晩ご飯の支度を手伝い始めた。
「二人でそのじゃがいもの皮を剥いてね」
「うん。わかった」
あたしと真奈美にじゃがいもの皮向きを頼んでくれたお母さんは、料理が上手で、毎日いろんな料理を作ってくれる。今夜の青山家の晩ご飯は、じゃがいもたっぷりのカレーライスと肉じゃがとポテトサラダとお味噌汁。
「ただいま。ふう。やっと我が家に着いた」
お母さんとあたしと真奈美との三人で料理を作っているうちに、お父さんが家に帰ってきた。
「お帰りなさい。今日も一日お疲れ様」
「お、今夜はカレーだな。すごく良い香りがするぞ」
「もうすぐ出来るから、もうちょっと待っててね」
「うん。今夜もビールを飲むとするか」
お母さんに出迎えられたお父さんは、いつものように寝室に入って服を着替えて、リビングの椅子に座った。おしどり夫婦とまではいかないかもしれないけど、お父さんとお母さんは仲の良い夫婦だと思う。
「お父さん、お疲れ様。はい、缶ビールだよ」
家族を養うために頑張って働いているお父さんに缶ビールを渡すのは、あたしの大切な役目の一つ。
「ありがとう」
あたしから缶ビールを受け取ったお父さんは、「ぷはあ。今夜のビールも、すごく美味しいなあ」と言って、ごくごくと音を立てながら飲み始めた。そんなお父さんの大好物は、カレーライスとラーメンとチャーハンと餃子とビールと柿ピー。
「カレーが出来たわよ。お皿に盛り付けるから、美咲と真奈美で運んでね」
「はーい」
お父さんが晩酌を楽しんでいる間に、あたしと真奈美とで、出来上がった料理をテーブルに並べて、みんなで椅子に座った。
「さあ、温かいうちに食べましょう。それではいただきます」
「いただきます!」
今夜も家族四人揃って晩ご飯を食べる。青山家の日常は、いつもだいたいこんな感じ。
「ねえ、あなた。今日は嬉しい知らせがあるのよ」
スプーンをお皿の上に置いて、椅子から立ち上がったお母さんは、とっても嬉しそうにしながら、駄菓子屋さんのチラシをお父さんに手渡した。
「この時代に、駄菓子屋がオープンするなんて、すごく珍しいな」
駄菓子屋さんのチラシを見たお父さんは、ちょっと驚いたような顔をしていた。
「うちにも見せて!」
お父さんから駄菓子屋さんのチラシを奪った真奈美は、スプーンを口にくわえたまま、
駄菓子屋さんのチラシをじっと見つめている。
「お父さんも、駄菓子屋さんに行ったことがあるの?」
早く駄菓子屋さんに行ってみたいという、あたしの好奇心は抑えられない。
「数え切れないほどあるぞ。今は見かけなくなってしまったんだが、お父さんとお母さんが子供の頃には、近所の周りにいろんな駄菓子屋があってな。ほとんど毎日のように駄菓子屋に行って、いろんな駄菓子を買って食べてたんだぞ」
「そうそう。私もよく駄菓子屋さんに通ってたっけな」
お父さんとお母さんは、昔を懐かしむような感じで、駄菓子屋さんに通っていた頃のエピソードを話してくれた。
「駄菓子屋さんて、昔はいっぱいあったんだね」
お父さんとお母さんの思い出話を聞いて、駄菓子屋さんというお店がどんな感じのお店なのか、だんだんわかってきたけど、自分の目で確かめてみないことには、今ひとつイメージが湧いてこない。今日は水曜日だから、あと十回寝れば、駄菓子屋さんに会える。