空の下の笑顔の樹
ふふふん♪
お手伝いで稼いだ百円玉を握り締めて、雨の日も風の強い日も、定休日以外の日は一日も欠かさず、真奈美と一緒にみんなの駄菓子屋さんに通い続けた。
ぶー。ぶー。ぶー。あたしも真奈美も、月のお小遣いで観光バスを毎月一台ずつ買っていき、お父さんとあたしと真奈美の観光バスを合わせて、青山家の観光バスは、十台にまで増えた。団体旅行、団体旅行、みんなで団体旅行。観光バスの座席数は、だいたい五十席くらい。目標は、二千人以上で団体旅行。
「美咲も真奈美もお疲れ様。はい、お駄賃の百円ね」
「どうもありがとう。みんなの駄菓子屋さんに行ってくるね」
この日も家事を手伝い、お母さんが手渡してくれた百円玉を握り締めて、真奈美と一緒に一目散にみんなの駄菓子屋さんに向かった。
「みんなの駄菓子屋さんのおじさん、こんにちは」
「美咲ちゃん、真奈美ちゃん、こんにちは。いらっしゃい」
いつも優しい笑顔で出迎えてくれるみんなの駄菓子屋さんのおじさんは、あたしと真奈美の第二のお父さんのような存在。
「チョコっと太郎をください」
「つぶつぶ太郎をください」
あたしはいつも、チョコっと太郎を買っていて、真奈美はいつも、つぶつぶ太郎を買っている。たまには他の駄菓子を買ってみようかと思うこともあるけど、ついつい、チョコっと太郎を買ってしまう。
「前から言おうと思っていたことなんだけど、美咲ちゃんと真奈美ちゃんは、仲良し姉妹だね」
みんなの駄菓子屋さんのおじさんが微笑みながら言ってくれた。
「うん! すっごく仲良しだよ!」
真奈美は恥ずかしげもない様子で返事をしていた。あたしはなんだか恥ずかしくなってしまい、何も言えずにいた。
「今日は、おばさんの姿が見えないんですが、どこかへお出かけしたんですか?」
あたしは話題を変えるため、珍しく一人でお店番をしているみんなの駄菓子屋さんのおじさんに聞いてみた。
「風邪を引いてしまってね。なかなか熱が下がらなくて、二階の部屋で休んでるんだ」
いつも笑顔でいるみんなの駄菓子屋さんのおじさんが心配そうな表情を浮かべている。
「そうだったんですか。おばさんの熱が早く下がるといいですね」
「うん。薬を飲んだから大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとうね」
笑顔で言ってくれたみんなの駄菓子屋さんの顔を見つめながら、あたしは考えた。一日でも早く、おばさんの笑顔を見たい。少しでもお役に立ちたい。
「おばさんの風邪がよくなるまで、お店番を手伝わせてください」
「うちもお店番を手伝います」
つぶつぶ太郎を食べる手を止めて言った真奈美も、あたしと同じ気持ちなんだと思う。
「美咲ちゃんも真奈美ちゃんも優しいね。それじゃあ、ちょっとだけお店番をお願いしようかな。お客さんが来たら、おじさんを呼んでくれればいいからね」
あたしも真奈美も小学生なので、断られるかと思っていたけど、みんなの駄菓子屋のおじさんは笑顔で頼んでくれた。
「はい! わかりました!」
あたしは嬉しくなって、大きな声で返事をした。
「うちに任せてください!」
真奈美も嬉しそうにしている。
「それじゃあ、お店番をお願いね」
みんなの駄菓子屋さんのおじさんが二階に上がった後、レジの後ろにある椅子に腰掛けて、真奈美と一緒にお店番を始めた。
「お客さんが来たら、大きな声で、いらっしゃいませって言うのよ」
「うん。わかった」
「ちょっと練習してみようか」
「うん。練習してみよう」
「それじゃあ、いくわよ。いらっしゃいませ!」
「みらっしゃいませ!」
「みじゃなくて、いだよ」
「あはははは。間違えちゃった」
お店の壁に向かって、挨拶の練習を始めたあたしと真奈美。お店番をするといっても、お客さんが来たら、二階にいるおじさんを呼びに行くだけだし、駄菓子やおもちゃを並べたりするわけでもないし、お会計をするわけでもない。それでも、みんなの駄菓子屋さんの店員さんになれたような気がして、ものすごく嬉しい。
「いらっしゃいませ!」
「みんなの駄菓子屋さんのおじさん! お客さんが来ましたよ!」
お客さんが来る度に、みんなの駄菓子屋さんのおじさんを呼びに行って、のんびりとお店番を続けているうちに、あたしの友達の友紀がやって来た。
「いらっしゃいませ!」
「どうして美咲と真奈美ちゃんが、お店番をしているの?」
友紀は、あたしと真奈美がお店番をしていることを不思議がっている様子で、首を横に傾げながら聞いてきた。
「おばさんが風邪を引いて休んでるから、忙しいおじさんの代わりに、お店番をしているんだよ」
「そうだったんだ。それなら、私にも手伝わせて」
友紀も、おばさんのことが心配なんだと思う。
「おじさんに聞いてみるから、ちょっと待っててね」
みんなの駄菓子屋さんのおじさんを呼んで、三人でお店番をしてもいいか聞いてみたところ、「友紀ちゃんにも、お店番をお願いするね」と笑顔で言ってくれた。
「いらっしゃいませ!」
真奈美と友紀と一緒にお店番を続けているうちに、なんとも言えない不思議な感覚に襲われた。お店番をしたのは今日が初めてのはずなのに、以前にもこうやって、のんびりとお店番をしていたことがあるような気がする。あたしはいつどこで、お店番をしていたのだろう。
「ねえねえ、お姉ちゃん。さっきからずっと黙ったままだけど、何かあったの?」
「ちょっと考え事をしてただけだから、大丈夫だよ」
「そっか、それならいいんだ。暗くなってきたから、電気を点けるね」
あたしが考え事をしている間に、いつの間にか、外が暗くなっていて、真奈美がお店の電気を点けた後、みんなの駄菓子屋さんのおじさんが二階から下りてきた。
「美咲ちゃん、真奈美ちゃん、友紀ちゃん。こんな遅くまで、お店番を手伝ってくれて、どうもありがとう」
「どう致しまして!」
「もうすぐ六時になるから、そろそろ家に帰ったほうがいいんじゃないかな」
「はい。それじゃあ、そろそろ家に帰りますね。おばさんの具合はどうですか?」
「だいぶ熱が下がってきたし、顔色もよくなってきたから、心配しなくても大丈夫だよ。
お店番を手伝ってくれたお礼として、このチョコレートの駄菓子をあげるね」
おばさんの具合を話してくれたみんなの駄菓子屋のおじさんが、お店番のお手伝いをしたあたしと真奈美と友紀に、可愛らしい五円玉の絵が描かれている袋が十個も繋がっているチョコレートの駄菓子を手渡してくれた。
「どうもありがとう!」
あたしも真奈美も友紀も、大きな声でお礼を言って受け取った。
「五円チョコ……」
「美咲ちゃんが言ったとおり、その駄菓子の名前は、五円チョコと言ってね。昔から多くの人に親しまれているチョコレートの駄菓子なんだよ」
あたしのつぶやきを聞いたみんなの駄菓子屋さんのおじさんは、昔を懐かしむような感じで、五円チョコの説明をしてくれた。みんなの駄菓子屋さんに通い続けて、四ヶ月になるのに、どうして今まで五円チョコの存在に気づかなかったのだろう。チョコレートが大好きなあたしが見逃すはずがない。
「この五円チョコは、初めて見ました」
「うちも初めて見ました」
「私も初めて見ました」
真奈美も友紀も、五円チョコを見たのは初めてだと言ってるから、見逃していたわけではなさそうだ。
お手伝いで稼いだ百円玉を握り締めて、雨の日も風の強い日も、定休日以外の日は一日も欠かさず、真奈美と一緒にみんなの駄菓子屋さんに通い続けた。
ぶー。ぶー。ぶー。あたしも真奈美も、月のお小遣いで観光バスを毎月一台ずつ買っていき、お父さんとあたしと真奈美の観光バスを合わせて、青山家の観光バスは、十台にまで増えた。団体旅行、団体旅行、みんなで団体旅行。観光バスの座席数は、だいたい五十席くらい。目標は、二千人以上で団体旅行。
「美咲も真奈美もお疲れ様。はい、お駄賃の百円ね」
「どうもありがとう。みんなの駄菓子屋さんに行ってくるね」
この日も家事を手伝い、お母さんが手渡してくれた百円玉を握り締めて、真奈美と一緒に一目散にみんなの駄菓子屋さんに向かった。
「みんなの駄菓子屋さんのおじさん、こんにちは」
「美咲ちゃん、真奈美ちゃん、こんにちは。いらっしゃい」
いつも優しい笑顔で出迎えてくれるみんなの駄菓子屋さんのおじさんは、あたしと真奈美の第二のお父さんのような存在。
「チョコっと太郎をください」
「つぶつぶ太郎をください」
あたしはいつも、チョコっと太郎を買っていて、真奈美はいつも、つぶつぶ太郎を買っている。たまには他の駄菓子を買ってみようかと思うこともあるけど、ついつい、チョコっと太郎を買ってしまう。
「前から言おうと思っていたことなんだけど、美咲ちゃんと真奈美ちゃんは、仲良し姉妹だね」
みんなの駄菓子屋さんのおじさんが微笑みながら言ってくれた。
「うん! すっごく仲良しだよ!」
真奈美は恥ずかしげもない様子で返事をしていた。あたしはなんだか恥ずかしくなってしまい、何も言えずにいた。
「今日は、おばさんの姿が見えないんですが、どこかへお出かけしたんですか?」
あたしは話題を変えるため、珍しく一人でお店番をしているみんなの駄菓子屋さんのおじさんに聞いてみた。
「風邪を引いてしまってね。なかなか熱が下がらなくて、二階の部屋で休んでるんだ」
いつも笑顔でいるみんなの駄菓子屋さんのおじさんが心配そうな表情を浮かべている。
「そうだったんですか。おばさんの熱が早く下がるといいですね」
「うん。薬を飲んだから大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとうね」
笑顔で言ってくれたみんなの駄菓子屋さんの顔を見つめながら、あたしは考えた。一日でも早く、おばさんの笑顔を見たい。少しでもお役に立ちたい。
「おばさんの風邪がよくなるまで、お店番を手伝わせてください」
「うちもお店番を手伝います」
つぶつぶ太郎を食べる手を止めて言った真奈美も、あたしと同じ気持ちなんだと思う。
「美咲ちゃんも真奈美ちゃんも優しいね。それじゃあ、ちょっとだけお店番をお願いしようかな。お客さんが来たら、おじさんを呼んでくれればいいからね」
あたしも真奈美も小学生なので、断られるかと思っていたけど、みんなの駄菓子屋のおじさんは笑顔で頼んでくれた。
「はい! わかりました!」
あたしは嬉しくなって、大きな声で返事をした。
「うちに任せてください!」
真奈美も嬉しそうにしている。
「それじゃあ、お店番をお願いね」
みんなの駄菓子屋さんのおじさんが二階に上がった後、レジの後ろにある椅子に腰掛けて、真奈美と一緒にお店番を始めた。
「お客さんが来たら、大きな声で、いらっしゃいませって言うのよ」
「うん。わかった」
「ちょっと練習してみようか」
「うん。練習してみよう」
「それじゃあ、いくわよ。いらっしゃいませ!」
「みらっしゃいませ!」
「みじゃなくて、いだよ」
「あはははは。間違えちゃった」
お店の壁に向かって、挨拶の練習を始めたあたしと真奈美。お店番をするといっても、お客さんが来たら、二階にいるおじさんを呼びに行くだけだし、駄菓子やおもちゃを並べたりするわけでもないし、お会計をするわけでもない。それでも、みんなの駄菓子屋さんの店員さんになれたような気がして、ものすごく嬉しい。
「いらっしゃいませ!」
「みんなの駄菓子屋さんのおじさん! お客さんが来ましたよ!」
お客さんが来る度に、みんなの駄菓子屋さんのおじさんを呼びに行って、のんびりとお店番を続けているうちに、あたしの友達の友紀がやって来た。
「いらっしゃいませ!」
「どうして美咲と真奈美ちゃんが、お店番をしているの?」
友紀は、あたしと真奈美がお店番をしていることを不思議がっている様子で、首を横に傾げながら聞いてきた。
「おばさんが風邪を引いて休んでるから、忙しいおじさんの代わりに、お店番をしているんだよ」
「そうだったんだ。それなら、私にも手伝わせて」
友紀も、おばさんのことが心配なんだと思う。
「おじさんに聞いてみるから、ちょっと待っててね」
みんなの駄菓子屋さんのおじさんを呼んで、三人でお店番をしてもいいか聞いてみたところ、「友紀ちゃんにも、お店番をお願いするね」と笑顔で言ってくれた。
「いらっしゃいませ!」
真奈美と友紀と一緒にお店番を続けているうちに、なんとも言えない不思議な感覚に襲われた。お店番をしたのは今日が初めてのはずなのに、以前にもこうやって、のんびりとお店番をしていたことがあるような気がする。あたしはいつどこで、お店番をしていたのだろう。
「ねえねえ、お姉ちゃん。さっきからずっと黙ったままだけど、何かあったの?」
「ちょっと考え事をしてただけだから、大丈夫だよ」
「そっか、それならいいんだ。暗くなってきたから、電気を点けるね」
あたしが考え事をしている間に、いつの間にか、外が暗くなっていて、真奈美がお店の電気を点けた後、みんなの駄菓子屋さんのおじさんが二階から下りてきた。
「美咲ちゃん、真奈美ちゃん、友紀ちゃん。こんな遅くまで、お店番を手伝ってくれて、どうもありがとう」
「どう致しまして!」
「もうすぐ六時になるから、そろそろ家に帰ったほうがいいんじゃないかな」
「はい。それじゃあ、そろそろ家に帰りますね。おばさんの具合はどうですか?」
「だいぶ熱が下がってきたし、顔色もよくなってきたから、心配しなくても大丈夫だよ。
お店番を手伝ってくれたお礼として、このチョコレートの駄菓子をあげるね」
おばさんの具合を話してくれたみんなの駄菓子屋のおじさんが、お店番のお手伝いをしたあたしと真奈美と友紀に、可愛らしい五円玉の絵が描かれている袋が十個も繋がっているチョコレートの駄菓子を手渡してくれた。
「どうもありがとう!」
あたしも真奈美も友紀も、大きな声でお礼を言って受け取った。
「五円チョコ……」
「美咲ちゃんが言ったとおり、その駄菓子の名前は、五円チョコと言ってね。昔から多くの人に親しまれているチョコレートの駄菓子なんだよ」
あたしのつぶやきを聞いたみんなの駄菓子屋さんのおじさんは、昔を懐かしむような感じで、五円チョコの説明をしてくれた。みんなの駄菓子屋さんに通い続けて、四ヶ月になるのに、どうして今まで五円チョコの存在に気づかなかったのだろう。チョコレートが大好きなあたしが見逃すはずがない。
「この五円チョコは、初めて見ました」
「うちも初めて見ました」
「私も初めて見ました」
真奈美も友紀も、五円チョコを見たのは初めてだと言ってるから、見逃していたわけではなさそうだ。