初恋は鉄の味
20年越しの告白

「あー、間に合わなかったかぁ。」
プルルルル、プシューッという音と共に、終電は行ってしまった。
「ごめんね、私がヒール履き慣れてないせいで遅くて……」
「いやいや、ははは!こんなに必死で走ったのどれくらいぶりだろう、歳とったよなぁ、俺らも。でも楽しかった。」
と、謝る朋子に対し聖一は息を上げながら笑った。
思わずつられてふふっと吹き出し、それもそうだねと笑う朋子の顔を聖一はじっと見つめた。
「やっぱり朋ちゃんはその笑顔だよなぁ、俺にとっちゃ高嶺の花だよ、今でも。」
なにそれ、とポカンとする朋子に聖一はさらに語る。
「今日会えてよかったよ。同窓会の招待状届いてから、ずっと朋ちゃん来るのかなーってそればっかり考えてたわ。高校ん時から好きだったけど、やっぱり好きだわ。」
そこまで言って、なにを言っているのか、あぁ酔った酔ったとごまかす聖一に、そうだよ聖ちゃん酔いすぎと返すのが朋子の精一杯だった。
でも、好きなのは本当だよと聞いた時には遅く、人一人いない駅のホームで聖一は朋子に口づけていた。
「聖ちゃん…?」
長い沈黙の中、朋子は幾度も私もずっと聖ちゃんが好きだったんだよと心の中で繰り返した。
朋子から聖一を抱きしめ返した時にはすでに黒い歯車が回り始めていた。
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