初恋は鉄の味
求め合って求め続けて
その夜、シャワーを浴びて寝る支度を終え、けれどどこか物足りないような抜け殻のような感覚で眠れない朋子の元に、通知。
【今から、出てこれないか?】
聖一からだった。
【行けるわ。】
もうメイクも全て落としてしまったのに、という言い訳とは裏腹に、手はすでにメイクをし直しお気に入りのイヤリングを付けていた。
聖一はもうすぐそこで待っていた。
「ごめん、こんな時間に。」
ううん、と首を振る朋子の手を聖一はぎゅっと握りしめて歩き初めた。
「かっこ悪いよなぁ、俺。さっきまで会ってたっていうのにさ、こんな子どもみたいな真似して。」
朋子はただひたすらに首を振りながら、その喜びに浸っていた。
二人がなにもかも忘れて二人になれる場所など、そう幾つもない。
たどり着く場所は皆目見当がつく。
「俺が一番最初に褒めたかったのは、朋ちゃんの料理じゃないんだ。あの可愛くて……そしてずるいくらいにエロいあのエプロン姿を見たら、こうせずにはいられないよ。」
と、聖一はほんの少し息を荒らげながら、朋子のブラウスをゆっくりと脱がした。
お互いが求め合うほどに、お互いが感じ合うほどに、胸は言いようのない苦しさを増した。
その痛みは癒しては深まり癒されてはひどくなったが、二人はそれを止めようとはしなかった。
「聖ちゃん、愛してるわ。ねぇ、私だけを見て。」
「あぁ、見てるよ。朋ちゃんだけを見てる。」
朋子は姿をくらましたままの、もう消息すらわからない元夫の話をしようとしていた。
なんだか、それを話さないのは聖一に不誠実な気がして。
聖一は黙ったまま口づけ、舌を絡め、大丈夫わかってるから、と思いのままに突き上げた。