未来の為に(仮定)
崩壊シ日常
午後23時12分、アンナさんは店の後片付けや戸締りを済まして外に出てきた。
アンナさんは勿論、俺も明日は仕事(俺はバイトだが…)があるので家へ帰る事にした。





「に、してもアンナさんルインズマンションに住んでたんですね〜ご近所さんじゃないですか」

「そーだな。もしかしたらどこかですれ違っていたかもな。」

「アンナはねー私と離れたくないからってルインズに引っ越したんだよ〜」

「なっ!べ、別に私は!」

「またまた〜照れちゃって〜」


俺達はこんな感じで談笑をしながら歩いていた。
この2人は本当に仲良いな…

そう思っていた時だった


「キャッ」

ミーナさんの短い悲鳴が聞こえた。

「なんだこれ…は」

僅かに震えるアンナさんの声


俺は周りを見た。
すると周りは明るくなったり暗くなったりを繰り返していた。
咄嗟に上を見る。
街灯が点いたり消えたりを繰り返していた。

これも充分に気持ち悪いが1番は…俺達の視線の先にある物だ。
何かがある。
街灯が点く度にその物体が主張する

これは……俺達の視線の先にあるのは…



「人が倒れている…」


それも1人じゃない5人の男性が倒れている。
服装やこの時間帯を考えると5人はサラリーマンか何かで一緒にお酒を飲んで…その帰り…か次の店へ行こうとしていた所なのか。
でもこれは酔い潰れて皆寝ている…って訳じゃない。

パチパチパチパチと点いたり消えたりを繰り返してる街灯のおかげで俺は咄嗟の動きが出来た。

俺はミーナさんとアンナさんに振り向き


「見ちゃダメだ!」

と体を大きく動かし2人の視界を閉ざそうとした。


「クチア君…あれは死体じゃないか…?」

「とにかく見ちゃ駄目だ!2人共後ろを向いて!」


「え…?死体…?え?何なの?私良く見えなーーー」

「アンナさん!!」

ミーナさんの言葉を遮る俺。
アンナさんはすぐさまミーナさんを後ろの方へ移動させた。

アンナさんが見てしまったのは残念だが、ミーナさんに見せなくて良かった…
パチパチパチパチと点いたり消えたりしてる街灯に感謝だ。

こんな…こんな光景……5人の男性が血塗れで倒れてる光景なんて見せれる訳無いから…


「クチア君!後ろ!」

ミーナさんを自分の腕の中に抱きしめながらアンナさんが言う。
その言葉を聞き俺は後ろを向いた。


「誰か……立ってる…?」


街灯の灯りでは見えないギリギリの所で誰か…何か…が立ってるシルエットが見える。
男か女か身長とかも分からないが何かが{存在す(イ)}る気配を感じる。

5人の死体がある場所に立ってるって事は…5人を殺した犯人しか居ない。


「アンナさん携帯の準備出来てますか?」

「あ、あぁ…あとはかけるだけだが…」


流石アンナさんだ….この状況で冷静に対処している。


「アンナさん念の為周りにも注意してください。相手は1人とは限りません」


「ねえ!な、何が起きてるの!?私分からない!」

「ミーナ大丈夫だ!だから大人しくしててくれ…」

「で、でも!」

「ミーナには見せたく無いんだ…」


空気を読んだのかミーナさんは大人しくなる。


「多分私の周りには誰も居ないと思う」


それを聞いて安心する。
って事は俺の目の前に{存在す(イ)}る奴1人か?

でもこれだけ俺達が会話をしているというのに喋るどころか動く事さえしない存在に俺は胸を高鳴らせる


「アンナさんけーー」

警察に電話を…と言おうとした時、目の前に存在してる何者かが街灯の光の下へ現れた。


「クチア君!あれは…なんだ?」


アンナさんの震える声が僅かに響いた後、何かを落としたような音が響いた。
多分携帯を落としたのだろう。

俺は言葉が出せないでいた。

街灯の下へと現れたのは人の形をしている。
だが、人間では無い。

肌は黒色で赤い髪?なのかな。
それに目も赤く輝いていて口からは牙が出ている。
全体的に何か黒いオーラ?みたいなそんな不思議な物を纏っていて…手…いや、正確には鋭く伸びた爪から血が滴り落ちていた。

これは人型をしてはいるが、人間ではない。ハッキリ言える!人間なんかじゃない!


ドクンドクンドクン
心臓の鼓動が早くなる俺は開いた口が塞がらない状態だ。


キッ!
と化け物の赤い目が輝く。
それと同時にゆら〜っと体が左右に動いたと思った瞬間


「がっ!?」

俺は腹にとてつもない痛みを感じる。
その後すぐに腹が熱くなる。

目の前には怪物の顔があった。
でも恐怖と言うより何があったのかが大事で…俺は少し視線を落とした。


「なん…だ…こ…れ…」

俺の腹を怪物の腕が貫いていた。


ズズッ……ズボッ
怪物が俺の腹から腕を抜く

プシャアアアァァ
と俺の血が辺り一面に吹き出す


「クチア君!!」

アンナさんの声が聞こえた


「クチア君!クチア君!クチア君!」

アンナさんの俺を呼ぶ声が聞こえるが…駄目だもう意識がハッキリしない。
これが死ぬ…って事か。俺は死ぬのか…

言葉を振り絞る


「に……げ…て……」


ドサァ!
俺はそう言った後地面に倒れる。


ドクドクドクドクと血が抜けていくのが分かる気がする。
目の前ももう暗い…そして周りの音も何も聞こえない。
このまま死んでいくんだ。
訳のわからないまま…何も出来ずに…俺は死ぬんだ…

ルチア…すまない…俺はお前を守れないまま無様に生き続けたのに
結局また誰も守れなかった…

目から涙が出ている気がした。
感覚はないが俺は多分泣いてる…。

あの日の光景が浮かぶ…ルチアを…妹を…守れなかったあの日…人生で1番後悔した日…あの後悔を超える後悔なんて無いと思ってた…
でも今はあの時と同じぐらい後悔している。

俺には誰も救えない…すぐ近くにいた妹も!…さっきまで笑いあってた人達も!俺は悔しい!悔しい!悔しい!なんで俺には力が無いんだ!!









今はただ2人が逃げれる事を切に願います……
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