LALALA
「今度の飲み会につけてこうかな」
「飲み会?」
「合コンだよ!モモが企画してくれたの。弁護士だって!」
「へえ、弁護士?すごいね」
「うん!素敵なバケーションを過ごすために気合い入れていかなきゃ!季里はいいよね~。博史くんいるし」
「、え」
「いいな~、夏休みとか旅行に行くんでしょ?カップルは」
「……まだ、決めてないんだ」


私は左右に首を振った。
すると夏子が、残念そうな顔をした。


「博史くん、仕事忙しいの?でも直にお盆だし、営業マンにも休みはあるんでしょ?」


おかしいな。
明るくてハキハキした夏子の声が、何メートルも遠くの方で響いているように感じる。
ただ、違和感のないように、小さく笑って聞き逃すのが精一杯。


「じゃあもし博史くんの休みが取れなくて、私の合コンも空振りに終わったら、また女子旅しようね!先月みたいに」


最後ににっと笑った夏子に、私は笑いながら頷いた。
開店前の雑貨店のドアが開く。


「あ、おはようございます」


販売のバイトの女の子が、私と夏子に向かって交互に会釈した。


「おはよ~、早坂さん。あれ、雨降ってた?」


バイトの子の姿を上から下までじろじろ見た夏子が、目を見開く。
彼女の髪から滴った水滴が、大理石の床に透明の水溜まりを作った。


「はい、駅に降りたらなんか急に降ってきて。もうびしょ濡れですー」
「大丈夫?風邪引かないようにしなきゃね。よかったらタオル貸すよ」


ストックルームにタオルがあるのか、そちらに向かおうとした夏子が一旦足を止め、ガラス張りのドアの外を眺めた。


「さっきまで、あんなに晴れてたのにねえ」
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