金曜日、21時9分発のバスで
今週もいるのかな。



私がすこしそわそわとしながらバスに乗り込んで約三分が経過した。
バスはいつのまにやら、私の乗った駅前から出発している。

ただいまの時刻は午後の9時を少し過ぎたくらいだ。私はピアノのレッスンの後、こうしてバスに揺られて帰るのが退屈だった。

………去年までは。



気が付けばバスはもうすぐ2つ目の停留所に着く。路線があまりにも駅やデパートと離れているから、今バスに乗っているのは私だけ。


都心ならまた話は違うのだろうが、ここは田舎だから、歩いている人すらあまり見かけない。


しかし停留所には人影がひとつ。私が待っていたのは、この人だ。


「悠馬さん、こんばんは」


「あ、小春さん!こんばんは!」


優しい表情をしてバスに乗り込んできたのは、悠馬さん。


毎週金曜日のこのバスでいつも会う、お友達。


私の、好きな人。
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