金曜日、21時9分発のバスで
そこから一年が経って、私は大学二年生となった。


金曜日のバスには相変わらず彼が居て、私が降りてしまうまでの十分間、話をする。


彼…悠馬さんは、私と同い年で大学三年生であることも、バイトの帰りのこのバスに乗ることも分かった。前に悠馬さんが教えてくれたのだ。


「小春さん、何かいいことあったんですか?嬉しそうな顔してますよ」


隣に座った悠馬さんが、微笑みながら私に聞いてくる。


私が嬉しそうに見えるのなら、悠馬さんに会えたからなのだけど。


引っ込み思案で人見知りな私には、いくら心を開いていたとしても「今日のバスにもあなたがいたからです」なんてことは言えないので、質問で返しておくことに決めた。


「そっちこそ、今日は一段と嬉しそうですけど、何かあったんですか?」


「え?良いことですか?」


こくりとうなずいた私に、悠馬さんは満面の笑みで爆弾を落としてくる。


「今日も小春さんに会えたからですよ!小春さんと話してると、元気が出るんです!」



ぶわっと頬に熱が集まっていくのがわかる。


この人はさらっとこういうことを言ってしまうから、いったい何人の女の子を勘違いさせたんだろうな、とか思ってしまうときも多々ある。

その考えでいくと、私も勘違いさせられた一人なのだけれど。


…ほら。


私が一週間に一度しか会えない彼に恋してしまうのは、こんなにも彼がまぶしいからで___。
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