金曜日、21時9分発のバスで
「じゃあ、これで。おやすみなさい」


停留所に着いたので、私は定期をもって立ち上がる。


おやすみなさい、と返した悠馬さんが私に手を振って、


いつも通りの台詞を言ってきた。


「また来週、小春さん!」


「はい、また来週!」


その一言だけで、また来週も会えるんだなって舞い上がってしまう私。


頬に集まった熱を逃がすようにして、まだ薄ら寒い春の夜道を歩く。


二分ほど歩けば、私の暮らすアパートが見えてくる。


一人暮らしだから、もちろん電気はついていない。


締め切られたカーテンは少し寂しげだった。



なんて。


いつも感じるようなことだけど、悠馬さんと話した後だと、寂しさなんて感じなくなる。


あの人は時々、何か魔法でもかけたんじゃないかと思うくらい、私に安心感を与えるのだった。
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