ハッシュハッシュ・イレイザー
 真理はうつむき加減でいるから、常に長い髪が顔を覆うように纏わりついている。

 また人と顔を合わさないから印象が薄く存在感がない。

 でも実際よく見れば、バランスのとれた美しい顔をしている。

 本人がそれに気がついていないし、おどおどとした態度と自身のなさで、折角の美しさも半減してしまっていた。

 そんな自信のなさが、紫絵里への依存となって、益々強くなる。

「そんなことないよ。私は紫絵里と一緒にいると楽しい」

 クラスの中で頼れるのが紫絵里しかいない真理にとって、何を言われても気にしない。

 紫絵里がクラスの女子に嫌われていようが、自分が嫌われようがどうでもよかった。

 そんなことで悩むような真理じゃなかった。

 真理の本当の悩みは誰にも言えない、遥か深い心の奥にだけある。

 きっと姉妹のマリアだけが理解できる複雑な感情。

 それが今よりももっと深刻になるのを、真理はいつも恐れていた。
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