ハッシュハッシュ・イレイザー
「だから、真理が心配することじゃないの。今度は真理が自分の事を考える番よ。わかってるでしょ。優介だって、あなたの出方を見てるの。だから紫絵里とああやって仲良くしてるんじゃないの。全てあなたのために、我慢して紫絵里のいいようにされてるのよ」

「えっ」

「まだわからないの?」

 マリアの厳しい目つきが真理に突き刺さり、思わず目を逸らしてしまった。

「ほら、またそうやって逃げる」

「でも……」

「何が『でも』なの? 真理の悪い癖ね。物わかりが良過ぎて、優し過ぎて、控えめになってしまう。私とは正……反対……」

 少し興奮し、マリアは言い終わった時、軽く咳き込んでしまった。

「大丈夫、マリア。横になって」

 真理はマリアを優しく労わりながらベッドに寝かした。

「ちょっと、言い過ぎたわ。ごめん。私は気は強い変わりに体は弱いのが残念ね。こんな体じゃなかったら……」

 その後の言葉が続けらずに、マリアは枕元に置いてあったお気に入りの本を手に取って胸元でギュッと抱きしめた。
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