ハッシュハッシュ・イレイザー
「ほんとだ、すごいな松永君」

「紫絵里はずっと隣にいて、松永君の実力に気が付かなかったの? それともライバル意識持って、自分の方ができるからと思い込んで見えなかったのかしら」

 突然の嫌味とも取れる、真理の意地悪な言葉。

 紫絵里の心で泥水のようにわだかまる。

「いや、総合的に見て、瀬良の方が俺よりできるから、そんなライバルなんて大げさな。だけど、少しでもいいところが見せられて、俺は得意げかも。ハハハハハ」

 恥ずかしげに照れた優介の笑い声と重なって、その時チャイムが鳴った。

 そこで終わりと告げられたように、紫絵里は少し落ち着いた。

 真理は自分の席に戻っていく。

 たまたま、期末が近付いていて、真理は焦りから気が立っていただけ。

 紫絵里はそう思い込もうとしていた。
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