ハッシュハッシュ・イレイザー
「でも許されない事をしている自覚はある。見ろ、俺の翼。今じゃカラスよりも黒いぜ」

「いいじゃない。黒光りしてて艶があって、とてもきれいよ。何も黒が悪い色ばかりじゃないわ」

「だが俺は、天使であるべき役柄を捨てた。今では死神さ」

「あら、死神でも神が付くわよ。高貴な存在」

「ナナはどこまでも他人事なんだな」

「さあ、どうかしら。私だって、感情は一応あるのよ。でもそれを表に出さないだけ。私はただ、あなた達の恋の物語を見たまま伝えるだけ」

「さて、今回はどうだったんだ?」

「まだ全ては終わってない。まだ結末はわからないわ」

「そうだったな。それじゃ、俺も最後まで彷徨える魂を探しに行くとするか。死にゆく人間の運命をほんの少しだけ早めに戴く」

 ハイドは私に気障ったらしい笑みを浮かべて、潔く飛び立った。

 かわいそうなハイド。

 この世界で生きていくために、人間の寿命を早めに奪い取らないといけない。

 余った残りを自分のものとするために。

 そしてマリアのために。

 後ろめたいから、罪悪感を抱いて、羽根が黒く闇に染まってしまった。

 だけど、無闇に命を奪ってるわけでもない。

 必ず死期が近いとわかっている人間しか狙わない。

 できるだけ、迷惑かけないようにと、配慮したハイドの気遣い。

 こんな風になってしまったのも、マリアと恋に落ちてしまったから。
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