ハッシュハッシュ・イレイザー
 病弱で長く生きられないと運命づけられたマリアは死後が近づいた時、迎えに来た天使のハイドと出会ってしまった。

 ハイドは命尽きたマリアの魂を行くべきところへと案内するはずだった。

 しかし、マリアは清らかに美し過ぎた。

 その美しさをこの世から消すのがもったいないとハイドは思うとともに、好奇心からもっと長く見つめていたいと願ってしまった。

 それがハイドの抱いた恋だった。

 マリアは常に病弱で外には出歩けず、そして自分が美しいことにも気が付かずに人生を終えようとしていた。

 そこに、見た事もない完璧な容姿の男性が現れ、自分に恋した優しい眼差しで見つめられれば、マリアも瞬時に心が奪われた。

 自分が長く生きられないと悟っていたマリアにとって、ハイドのような天使に出会えたことは、自分の人生最後に与えられた僥倖とでもいうべき、この上ない喜びでもあった。

 一秒でも長く生きて、恋をしていたいとマリアは願った。

 二人のその思いが重なった時、ハイドは禁忌をおかし、天使の持つこの世界に存在するエネルギー、すなわち天使にとっての命をマリアに分け与えてしまった。

 それは化学反応とでもいうべき、副作用が生じてしまい、全てが上手くはいかなかった。

 だから、複雑に混乱が生じてしまっている。
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