ハッシュハッシュ・イレイザー
 鮎川はその生徒たちを見つめ、かつての自分の姿と重ね合わせる。

 過去の自分によく似た生徒はいないかと思った時、紫絵里が当てはまるように思えた。

 今ではすっかりと大人になって、それに伴って、考え方も性格も変わったが、以前は友達も少なく、融通の利かない頑固な子供だった。

 迷える子羊のように、まだ不安定な年頃の生徒達を見ながら、少しでも彼らの役に立ちたいと、華純は胸を張った。

 クラスの中では生徒を支配する立場として気持ちよく、自分が教師として教壇に立ってることがとても感慨深く思えるのだった。


 くじを引き終わった生徒たちが、そわそわして自分の席を確認している。

 クラスで一番人気のある松永優介がちょうど、くじを引こうとしている時だった。

 女子達の目が一斉にそこに集まった。

 優介がくじを引いた後、その番号を確かめようと、女子達がそわそわと落ち着かない。

 彼女達は密かに優介の隣になれることを願っていた。
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