ハッシュハッシュ・イレイザー
 ──紫絵里と瑠依が優介の取り合いをした果ての三角関係の末に起こった事故。

 ──二人が共謀して優介を責めたてた末に、責任を取った優介の自殺説。

 ──または弄ばれた二人の怨念が優介を呪い殺したなど。

 なぜ優介が死んでしまったのか、まだこの時は死因が明らかになってなかったので、それは格好の餌食となって学校中その話題でもちきりとなっていた。

 人が死んだというのに、それは簡単に茶化され、笑うものも出る始末。

 自分が知ってるというだけで、それを利用して誇示欲に駆られて、全く知らないところで自慢げに情報を発信する者。

 そこから尾ひれがつき、様々な方向へと話は作り変えられて流れていく。

 自分勝手な輩ばかりが、この世に存在している。

 人は自分が犠牲にならなければ、決してその痛みはわからない生き物なのだ。

 自分に災いが振りかからなければ、口に重みがなく、次々と便乗して調子に乗ってしまう。

 また瑠依の証言から、他の者がいて、優介は第三者に殺されてしまった噂も飛び交った。

 瑠依が必死に見たままを説明したところで、誰も理解するものはいなかった。

 例えそれが真実だとしても、情報は歪んでしまい、憶測の中で次々と真実から逸れて育っていく。

 真実を知ろうとしないで、一部分を見ただけでも、決めつけてしまう。

 この時も、紫絵里の本当の立場を知らずに、いや、知ろうとする前に先入観が邪魔をして正しく認識されなかった。
< 162 / 185 >

この作品をシェア

pagetop