ハッシュハッシュ・イレイザー
 狡いと言われようが、したたかと言われようが、そうさせているのは周りの目でもある。

 瑠依もまた周囲に翻弄され、真実を知っていても誰にも言う気にはなれなかった。

 そこに自分を信じてくれる味方がいないと、自分が不利になる。

 そして紫絵里のように孤立して嘲笑われるのが怖かった。

 かつて自分が嘲笑う方の人間であったから、自業自得に罰が当たっていると感じているのかもしれない。

 大人しくなっている瑠依を見ると、瑠依もただの感受性の強い女の子に過ぎなかった。

 思春期のよくある誇示欲を持ったことで調子に乗っていた瑠依だったが、この先どこかで成長していくように私は思えた。

 そしてクラスでも、人気者だった優介の死は多大な影響を与えていた。

 紫絵里が入院している間に優介の葬儀が行われ、様々に涙が流れた。

 優介を失った悲しみと謎が多いこの出来事に、生徒たちはショックとストレスの両方で心身ともに支障をきたしていた。

 担任の鮎川華純はこの事態をなんとかしたいと、心のケアに専念するも、心の底では一時の事だと割り切って考えていた。

 ちょうど夏休みを控え、時が経てばこの騒ぎも落ち着き、また元に戻る。

 それまでの辛抱だと、華純は生徒達を教壇から見つめていた。
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