ハッシュハッシュ・イレイザー

 一方、この出来事に深く係わっていた紫絵里は、病院の個室のベッドの上に居た。

 個室が宛がわれるくらい、紫絵里はそこそこの余裕がある暮らしができる家庭の子供に違いない。

 体には全くの異常はないが、優介を思い出しては泣きじゃくり、真理の存在に怯えて、精神が不安定になり、時々気持ちが抑えられず、寝ている間に発狂することがあった。

 ショックが強いと判断し、また精神の不安定さから優介の後追い自殺をされても困ると、大事を取って親が当分の間、入院させていた。

 目の前で、人が一人死んだのだ。

 しかも、ずっと好きだった優介が、自分の友達に殺されてしまった。

 その真実は紫絵里しか知らないが、精神が崩壊するほど紫絵里はおかしくなっていると、周りも決めつけていた。

 だから、紫絵里が目覚めて、病室の隅にいる私の顔を見たとき、声を張り上げてパニックに陥った。

 それはそれで私を傷つけたが、仕方のない事だと、紫絵里が落ち着くまで静かにその病室の隅で立っていた。

 それが余計に恐怖を植え付けていたと知ったのは、少し経ってからだった。
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